関西大学映像文化学会 eizoubunka
2012-07-04T00:01:27+09:00
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このブログは、関西大学文学部総合人文学科映像文化専修に関するさまざまなお知らせを掲載するブログです。随時更新されますので、定期的にチェックするようにしてください。
Excite Blog
湯浅誠・津田大介講演会「自分で動く 社会を動かす」のお知らせ
http://eizoubunka.exblog.jp/17694182/
2012-06-25T18:09:28+09:00
2012-06-25T18:09:24+09:00
2012-06-25T18:09:24+09:00
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未分類
関西大学映像文化学会は、下記の講演会を共催します。
関西大学文学部学術講演会
「自分で動く 社会を動かす」
湯浅誠氏(社会運動家)
津田大介氏(ジャーナリスト、メディア・アクティビスト)
日時:7月6日(金) 13:00~14:30
場所:関西大学千里山キャンパス 第1学舎1号館 千里ホールA
参加費、事前申込不要
貧困、震災、原発、「橋下改革」など、現在の日本がかかえるさまざまな問題をめぐって、活動分野を 異にしながら、それらすべてを「わたしたち」の問題ととらえる二人のアクティビスト=活動家が、そ れぞれの立場から議論しつつ、学生、そしてすべての人々にかたりかける初対談。
「自分ひとりが何かやっても、どうせ何も変わらない、と感じている人が世の中の圧倒的多数だと、た しかに自分ひとりが何かやっても、誰も反応してくれないので、結果的に何も変わりません。というこ とは、自分が誰かに反応できれば、ベクトルは逆転していくかも? なんだ、できることってあるんじゃ ないか...ということを考えていければと思います。」(湯浅誠談)
詳細はこちら↓
http://www.kansai-u.ac.jp/calendar/archives/2012/07/post_17.html
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トマス・ラマール教授講演会のお知らせ
http://eizoubunka.exblog.jp/17668590/
2012-06-18T16:49:00+09:00
2012-07-04T00:01:27+09:00
2012-06-18T16:49:25+09:00
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各教員からのお知らせ
トマス・ラマール教授の講演会が下記の通り開催されます。ふるってご参加ください。
トマス・ラマール教授(マギル大学)講演会
エクスプローデッド・プロジェクション——技術的パラダイムと日本アニメ
日時:2012年7月5日(木)15:00~17:00
場所:京都大学吉田南キャンパス総合館南棟334教室 東棟101演習室(会場が変更になりました)
司会:門林岳史(関西大学)
使用言語:日本語
*入場無料・事前登録不要
本講演は、デジタル技術の衝撃に対して現代アニメがもたらす洞察を、日本のアニメ・メディアアート・物質文化ならびにハリウッドのSFX映画を実例として検討する。イメージと運動が組織される既存のモードがデジタル技術によって容赦なく脱-構造化された結果、イメージのフローとイメージの世界の組織化を構造的に把捉にあたっての新たな支配的モードとして、爆発する投影(exploded projection)が現れた。日本アニメの世界的ブームはもとより、現代においてアニメーションが遍在する一因は、イメージの組成という次元においてアニメーションが作用する傾向に存する。そうしたアニメーションの傾向が、運動とフローの新たなモードへとイメージ空間を開くとともに、新たな技術的パラダイムを作動させているのである。
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阿部マーク・ノーネス教授講演会のお知らせ
http://eizoubunka.exblog.jp/17655851/
2012-06-14T22:31:00+09:00
2012-06-18T16:55:24+09:00
2012-06-14T22:30:43+09:00
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未分類
下記の通り、阿部マーク・ノーネス教授を招いて講演会を開催します。ふるってご参加ください。
阿部マーク・ノーネス教授(ミシガン大学)講演会
Translating Calligraphy
日時:6月27日(水)17:00-18:30
場所:関西大学千里山キャンパス尚文館503演習室
(キャンパスマップ→http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/mapsenri.html)
使用言語:英語・日本語
Calligraphy and cinema have an intimate relationship in East Asia. Indeed, the ubiquity of the brushed word in cinema is one element that actually ties works in Korean, Japanese and Sinophone Asia together as a regional cinema. On first glance, cinema and calligraphy would appear as radically different art forms. On second glance, they present themselves as sister arts. Both are art forms built from records of the human body moving in (an absent) time and space. How does one adequately subtitle a calligraphic script, attaching the dead letter of helvetica to a linguistic text whose visual materiality is so spectacularly central to meaning making? How does investigating this very problem lead us to rethinking the nature of the cinematic subtitle, which is very much alive―a truly movable type?
主催:関西大学映像文化学会(http://eizoubunka.exblog.jp/)
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シンポジウム「震災と映像」関連情報
http://eizoubunka.exblog.jp/17121627/
2012-01-26T21:35:00+09:00
2012-01-26T21:42:37+09:00
2012-01-26T21:35:23+09:00
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未分類
先日案内しましたシンポジウム「震災と映像」の開催が
いよいよ明後日(1月28日)にせまってまいりました!
関連情報を以下にまとめましたので、どうぞご参照ください。
・映画『無常素描』公式HP
http://mujosobyo.jp/
・映画上映プロジェクト「Image.Fukushima」公式HP
http://image-fukushima.com/
今回基調講演をされる三浦哲哉氏が実行委員会会長を務める
映画上映プロジェクト「Image.Fukushima」については
すでに各種メディアに紹介されています。
ウェブ上で読めるものとして、例えば下記をご覧ください。
「Image.Fukushima」Vol.2 三浦哲哉(映画批評/大学講師)実行委員会会長インタビュー(『映画芸術』HP)
フクシマをイメージする(震災取材ブログ)(『日本経済新聞』)
・その他
共同討議で提題される林田新さんが、本シンポジウムと
テーマとして関連の深いシンポジウムの報告を書いています。
林田新「災厄(カタストロフ)の記録と表象――3・11をめぐって」報告(表象文化論学会ニューズレター『REPRE』14号)
共同討議で司会を務める門林は、恵比寿映像祭HPに下記のエッセイを寄せました。
門林岳史「カタストロフの映像は今?」(恵比寿映像祭HP Yebizoフォーラム)
こちらもあわせてご覧ください。(門林岳史)]]>
シンポジウム「震災と映像」開催のお知らせ
http://eizoubunka.exblog.jp/17063446/
2012-01-11T23:47:00+09:00
2012-01-12T22:55:00+09:00
2012-01-11T23:47:15+09:00
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専修からのお知らせ
1月28日に関西大学東西学術研究所と関西大学映像文化学会の共催で「震災と映像」と題したシンポジウムを開催します。ぜひご参加ください。
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関西大学東西学術研究所特別講演会/比較映像文化班研究例会
シンポジウム「震災と映像」
日時:2012年1月28日(土)13:00–17:30
場所:関西大学千里山キャンパス以文館4階セミナースペース
阪急電鉄千里線関大前駅下車徒歩10分(地図)
主催:関西大学東西学術研究所/関西大学映像文化学会
*入場無料・申し込み不要
東日本大震災とそれに伴う原発事故という未曾有の複合災害は、映像という表象メディアにも大きな課題を突きつけている。本シンポジウムでは、映画祭「Image.Fukushima」の実行委員長を務める三浦哲哉氏、福島中央テレビで震災報道の現場に携わった村上雅信氏を招き、それぞれの立場から震災後の映像の現状について語っていただく。それとともに強制収容所や原爆といった他のカタストロフの表象についての報告を交え、カタストロフに向かう映像の諸問題について歴史的なパースペクティヴから討議する。また、東日本大震災の状景をいち早くカメラに捉えて話題となったドキュメンタリー映画『無常素描』もあわせて上映する。
13 :00–14 :20 映画上映『無常素描』(大宮浩一監督/2011)
14 :30–15 :15 基調講演「福島と3.11のイメージ」
三浦哲哉(Image.Fukushima実行委員会会長)
15 :30–16 :00 講演「震災・原発報道と映像」
村上雅信(福島中央テレビ報道部記者)
16 :00–17 :30 共同討議「カタストロフの映像」(司会 門林岳史)
堀潤之「カタストロフへのまなざし 収容所の表象をめぐって」
林田新「東松照明と原爆の表象」
チラシをダウンロード
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問い合わせ先 関西大学東西学術研究所
564-8680 吹田市山手町3-3-35
児島惟謙館1F(研究室事務室)
TEL 06-6368-0653/FAX 06-6339-7721
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『東日本大震災 東北朝鮮学校の記録 2011.3.15-3.20』上映&トーク
http://eizoubunka.exblog.jp/16951637/
2011-12-15T01:38:00+09:00
2011-12-15T01:39:12+09:00
2011-12-15T01:38:31+09:00
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専修からのお知らせ
「小さな声、低い視線」をモットーに在日コミュニティなどの取材活動をしているコマプレスさんをお招きし、山形国際ドキュメンタリー映画祭2011などで上映された映像作品『東日本大震災 東北朝鮮学校の記録 2011.3.15-3.20』の上映(30分の短縮バージョン)およびトークを行います。
日時:12月20日10時40分~12時10分
場所:関西大学千里山キャンパス第1学舎5号館E210教室
*本イベントは関西大学文学部の授業「映像メディア研究b」(担当:門林岳史)の一環として行いますが、受講生以外の方もどうぞお越しください。]]>
アンダー・グラウンドの後で--中国ニューインディペンデント映画の現在 上映日程の変更について
http://eizoubunka.exblog.jp/16752990/
2011-10-29T19:09:00+09:00
2011-10-29T19:10:11+09:00
2011-10-29T19:09:38+09:00
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各教員からのお知らせ
10月30日に予定されていた上映会は、11月5日へと変更になりました。
詳細は次のサイトでご確認ください。
http://filmunder.blogspot.com/2011/10/updating.html]]>
アンダー・グラウンドの後で--中国ニューインディペンデント映画の現在
http://eizoubunka.exblog.jp/16585540/
2011-09-21T21:03:00+09:00
2011-09-21T21:05:40+09:00
2011-09-21T21:03:36+09:00
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各教員からのお知らせ
この秋、大阪で久々に中国インディーズ映画を見られる機会があるので、お知らせします。
日本未公開の作品も多く、とくに応亮(イン・リャン)監督の最新作は必見です。
そのほか、女性監督特集やアニメーション特集など、この分野では珍しい企画ものもあります。
イベントのキャッチ・コピーは「ジャ・ジャンクー以外に、どんな中国インディペンデント監督を知っていますか?」
ジャ・ジャンクー以外の作品を見たことがなければ、是非足を運んで下さい。
「アンダー・グラウンドの後で--中国ニューインディペンデント映画の現在」
http://filmunder.blogspot.com/
運営しているのは、大阪で学ぶ中国人留学生が中心です。映像文化専修の大学院生も翻訳等のお手伝いをしました。(菅原慶乃)]]>
シンポジウム・映画上映・講演会「侯孝賢映画から台湾、そしてアジアを知る」参加記(その2)
http://eizoubunka.exblog.jp/16206895/
2011-06-30T20:45:00+09:00
2011-06-30T20:52:08+09:00
2011-06-30T20:45:06+09:00
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コラム
以下はシンポジウムのコメント原稿です。(菅原慶乃) 今日わたしは唯一の日本側のコメンテーターということですので、日本でホウ・シャオシェン映画がどのように受容されてきたのかについて、ごく簡単にご紹介するところから始めたいと思います。
日本におけるホウ・シャオシェン作品の受容のされ方には、おおざっぱに言って二つあったと思います。一つは普遍主義的な立場からの受容、もう一方は反映論的な立場からの受容です。
まず前者についてですが、これは1980年代に全国的に大きな流れとなったミニシアターのブームが背景にあります。ミニシアターは、ホウ・シャオシェン作品に限らず、中国ニューウェーヴや香港のノワール映画の多くを受け入れる土壌となりました。ここで注目すべきなのは、ミニシアターでは、それらの「アジア」の映画作品が、他の欧米の独立系監督の作品――例えばジム・ジャームッシュやヴィム・ヴェンダースといったような監督の作品と同一の地平で受容された、という点にあります。つまり、彼らの作品は「世界映画」というユニヴァーサルな分脈で、ミニシアターに足繁く通う日本のシネ・フィルたちに受容されました。
次に後者ですが、これは前者と対照を成している立場です。具体的には、ホウ・シャオシェンの映画には台湾の歴史、政治、そして文化が反映されているので、ホウ監督の作品を、台湾を理解する教科書として受容する、という立場です。前者の立場が普遍主義的であるのに対し、こちらの方は台湾の個別の歴史的、政治的分脈からホウ・シャオシェン映画をとらえようという立場だと思います。この受容の形態を考えたときに、わたしの脳裏にふと浮かんだのが、フレドリック・ジェイムソンが1980年代に発表した論文で書いていた「第三世界文学は民族のアレゴリーである」というあの悪名(?)高い論考です。「悪名高い」と形容したのは、この論考が発表された後、彼が「第三世界」と範疇化するところの作家や研究者たちからの反論が少なくないということがあるからです。アジアの映画との関連で言えば、レイ・チョウが『プリミティブ・パッション』という書物の中で痛烈な批判を展開しています。これらの議論を、乱暴なまとめになるのは承知で簡単にまとめますと、「第三世界文学」とは主人公の個人的な運命が即政治や国家の問題とリンクしており、そういう意味で「寓話的(アレゴリカル)」なものとして読まれるべきだとするジェイムソンの主張に対し、いやいや、「第三世界文学」が植民地支配とか革命とかそういう観点からしか読まれないのはおかしい、そのような読み方は「第三世界文学」には政治的なもの以外価値がないということではないだろうか、それは違うだろう、もっと多様な側面があるだろう、という反論が様々な立場からなされたのでした。
実は、今ご紹介した二つの受容の立場、つまり、ホウ・シャオシェン映画を普遍主義的立場から読むのか、それとも台湾固有の分脈の上に読むのか、という二者の対立は、ホウ監督作品の受容過程に限られたことではありません。同時期に受容された中国ニューウェーヴ映画の受容もある程度同じことが言えますし、日本におけるイラン映画の受容となどにも同様のことがあると思います。逆に、たとえば1950年代に日本映画が世界の映画界で大きく注目された時も、欧米圏における日本映画の受容には普遍主義的なものと個別主義的なものがあるということが言われました。こうして見ますと、「普遍」対「個別」という問題は、おそらく、「他者」をどう眼差すか、という、極めて近代的な問題提起へつながっているような気がします。
ホウ・シャオシェン作品に話を戻しますと、現代の台湾映画作品の中でも論じられる数が桁外れに多い監督ですから、世界中で膨大な数のホウ・シャオシェン論が書かれているわけです。そこで近年、それらの論考を系統的に整理するような仕事が散見されるようになりました。いわば、ホウ・シャオシェン論言説の交通整理のような仕事です。本日のシンポジウムで発表される葉月瑜先生、デイヴィス先生はこのタイプのお仕事において先駆的な役割を担ってこられました。そこで言及される問題というのも、やはり、ホウ監督作品の読まれ方が台湾固有の歴史、政治的な文脈からのアプローチが強調されすぎるきらいがあり、しかもやっかいなことに、東洋と西洋を二極化して世界をとらえるような文脈から、オリエンタリズム的に読まれることがあまりに多いということに重点が置かれています。そこで注目されるようになったのが、個別の文化的文脈に固執しすぎず、かといって極度に普遍主義的に読むのではなく、既存の枠を越えた読み方が模索されるようになったわけです。
さて、今日の4つの発表でも、多かれ少なかれ、「普遍」対「個別」という枠組みを超えた新たな読みが試みられたものだったと思います。
廬非易先生の発表では、『百年恋歌』の第2パート「自由の夢」が、日常の些末な風景を不断に重複する描写によって、「時間の芸術」であるとされる映画から時間性を剥奪し、その代わりに、全体を俯瞰するような立場から「空間」的に描いているという事が指摘されました。
葉先生とデイヴィス先生の発表は、ホウ監督作品を、台湾ニューシネマや台湾の現代史といった個別の分脈から敢えて切り離し、1930年代の中国の文学界で活躍した作家沈従文との意外な、そして重要な接点について明らかにしたものでした。ホウ監督と沈従文との設定については、ホウ監督が被写体となったドキュメンタリー作品『HHH』でも取りあげられていましたし、葉先生とデイヴィス先生もかつてのご著書の中ですでに指摘していたことです。今回あらためて日本語でこの指摘が紹介されたことで、おそらく日本の中国文学研究者の方にも新鮮な驚きが共有されたのではないか、と思います。ホウ監督作品を個別の分脈から大胆に、かつ実証的に“解放”させるという新しい読みの規範的なご論考だったと思います。
韓燕麗先生の発表では、ホウ監督が古典的ハリウッド作品に典型的に見られるような映画言語を踏襲せず「第三世界映画」という考えに通じるようなスタイルを確立したこと、また台湾の固有の分脈に根ざした部分もあるがそれだけで論じきることができるような監督ではない、といった事が指摘されました。そして、わたしが前述したような「普遍」対「個別」という読み方に収斂され得ないホウ監督作品があるのだということが示唆されました。
西村正男先生の発表では、ホウ・シャオシェン映画に見られる日本的な要素の見取り図が示されると同時に、ホウ監督が日本映画界から受けた影響は、小津安二郎のような主流映画というよりも、小林旭等が出演していたにっかつアクションのようなより「大衆的な」作品からの影響が強いのではないか、という指摘がなされました。この指摘をわたしになりに別の角度から言い直しますと、おそらく、日本の植民地支配や戦後の台湾のポスト植民地状況にかんする研究は、これまでは割合公的な部分や文化的に「高尚」な層に対する関心が高かったけれど、実は日本の大衆文化のレベルでも大きな影響があったのだ、ということを指摘されたものだと理解しています。『憂鬱な楽園』が果たして『南国土佐を後にして』を意識していたかどうかという問いの実証主義的な「正しさ」はさておき、こうした斬新な読みが批評をより豊かにするという事は言えると思います。
最後に、4名の先生方が用いた研究手法――すなわち、「普遍」対「個別」を乗り越えるような、新たなホウ・シャオシェン作品の読み方――は、ホウ監督作品を論じる時のみに有効なのか、あるいは他の監督作品にも適用できるか、そうであるならば他にどんな台湾の監督がいるのか、ということをご教示いただきたいと思います。
以上]]>
シンポジウム・映画上映・講演会「侯孝賢映画から台湾、そしてアジアを知る」参加記(その1)
http://eizoubunka.exblog.jp/16206867/
2011-06-30T20:39:00+09:00
2011-06-30T20:53:15+09:00
2011-06-30T20:39:53+09:00
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コラム
シンポジウム・映画上映・講演会「侯孝賢映画から台湾、そしてアジアを知る」参加記(菅原慶乃)
2011年6月28日、関西学院大学にて標題シンポジウムが開催された(主催:関西学院大学/台湾行政院文化建設委員会/財団法人自由思想学術基金会)。実はこれに先立つ先週末、名古屋で「台湾映画祭+シンポジウム――侯孝賢の詩学と時間のプリズム」(主催:名古屋大学大学院国際言語文化研究科、台湾・行政院文化建設委員会、財団法人自由思想学術基金会、愛知芸術文化センター)が開催されており、関西学院大のイヴェントは名古屋のシンポジウムの姉妹編というべき催しであった。 このイヴェントは、標題にある通り、シンポジウム、『恋恋風塵』の35ミリフィルム版上映会、そしてホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督と彼の作品の多くの脚本を執筆してきたチュー・ティエンウェン(朱天文)氏による講演会の3部から構成されたものだった。
筆者は、幸運にもシンポジウムのコメンテーターという役割を与えられての参加であったが、筆者自身の備忘録として、ここにささやかな参加記を残したいと思う。
まず第1部のシンポジウムについて、最終版プログラムは以下の通りである。
盧非易(台湾・政治大学)
「鳥瞰時光―侯孝賢映画の語りと時間」(中国語・通訳付き)
韓燕麗(関西学院大学)
「”第三世界美学”と侯孝賢映画」
葉月瑜(香港・浸会大学) ダレル・デイヴィス(香港・嶺南大学)
「侯孝賢と中国現代文学」(中国語・通訳付き)
西村正男(関西学院大学)
「台湾映画・侯孝賢と日本」
総合討論:
張小虹(台湾・台湾大学) 菅原慶乃(関西大学) 陳儒修(台湾・政治大学) 廖炳惠(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)
4名の発表者はいずれも映画研究、中国文学研究の第一線で活躍されていらっしゃる面々であり、それぞれに斬新で刺激的な視座から、ホウ・シャオシェン作品を再読するというスタンスで共通していたと思う。コメンテーターの張小虹先生、陳儒修先生、そして廖炳惠先生のやはり文学・映画研究の方面をリードしている方々であり、4つの発表の問題意識をさらに深め、議論を豊かにするヒントが与えられたと思う。全体として、予定されていた時間で語り尽くせないほどに多様で充実した内容であった。
このシンポジウムにおける筆者の役割は、4つの発表に共通する話題を提供する、というものであったが、当日披露できなかった部分を含めたコメント原稿の全文を本稿末尾に附した。各発表のポイントも書いたつもりなので、ご参照いただければ幸いである。
なお、今回のシンポジウムで発表された論考は、近い将来に書籍として出版される計画があるとのことだ。書籍の出版後に再度、例えば書評会のような形で議論をさらに深める機会を企画できれば、と願う次第である。
第二部の『恋恋風塵』のフィルム上映会には、おそらくは100名近い観客が参加していたものと思われる。デジタル特有の「堅さ」から解き放たれた柔らかいフィルムの雰囲気は、この作品の切ない主題をより叙情的に演出しているように感じた。
第三部の講演会では、ホウ・シャオシェン監督が「私の映画人生」、チュー・ティエンウェン氏が「私と侯孝賢映画」とのタイトルで行われたが、ホウ監督とチュー氏の絶妙な掛け合いが披露された。
ホウ監督は、その独特のゆったりとした穏やかな調子で、監督自身にとって映画を撮るということにはどのような意義があるのか、について語ってくださった。ホウ監督にとって映画は、生活の一つ一つの場面において(その集積はつまり人生ということになると思うが)人といかにコミュニケートしていくのか、という問題と密接にリンクしており、その方法はあくまで顔と顔をつきあわせた直接的な、そして現場でなされるべきものである、という。ホウ監督自身パソコンをつかったコミュニケーション・ツールはほとんど使わないとのことだが、それもこうした信念の実践であろう。
「映画を撮るのは早いが話すのは遅い」と自らを形容するホウ監督の発言に、絶妙のタイミングで絡み合うのがチュー氏であった。ホウ監督が感性、感覚で思考するとすれば、それを言語化するのがチュー氏であるようだ。個人的に交流があるという中国の美術家陳丹青の創作活動や、ホウ監督作品の自伝的スタイル確立に決定的な影響を与えた沈従文の自伝を例として挙げながら、生活の現場に臨場しつづけ、そこで「見ること(「我看見」)」、それを「信じること(「我相信」)」、そしてそれを「記録すること(「我紀録」)」が、ホウ監督の映画制作の重要な姿勢であるという点が、極めて明解に講じられた。チュー氏によれば、『風櫃の少年』、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』は、ホウ監督のこの創作姿勢が確立するにあたり、非常に大切な契機だったという。ホウ監督自身もこ2作品に『憂鬱な楽園』を加えた3つの作品が、自ら認める重要な作品だとのことであった。
最後に、今回のイヴェントの主催に名を連ねている自由思想学術基金会の会長で、台湾政治大学の薛化元教授は6月から8月中旬までの約2ヶ月間、招へい教授として関西大学で研究活動に専念されている。薛先生によれば、今回のイヴェントは同基金会が日台の文化交流を促進する目的で始めた活動の一環であり、今回が第三弾ということであった。次回は文学と歴史研究にかんする内容で準備を進める予定だというが、今後も同様のイヴェントが開催されることを強く願っている。]]>
シンポジウム・映画上映会・講演会「侯孝賢映画から知る台湾、アジア」
http://eizoubunka.exblog.jp/16168038/
2011-06-22T19:09:00+09:00
2011-06-30T20:54:08+09:00
2011-06-22T19:09:41+09:00
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各教員からのお知らせ
6月28日(火)に関西学院大学にて侯孝賢監督を囲むイベントが開催されます。ふるってご参加ください。
シンポジウム・映画上映会・講演会「侯孝賢映画から知る台湾、アジア」
■日時: 6月28日 (火) 12時20分 ~19時
■場所 西宮上ケ原キャンパス 関西学院会館 翼の間およびレセプションホール
■詳細
12:20-15:20 於・関西学院会館 翼の間
シンポジウム「侯孝賢映画から台湾、そしてアジアを知る」
発表者:
盧非易(台湾・政治大学) 「鳥瞰時光―侯孝賢映画の語りと時間」(中国語・通訳付き)
韓燕麗(関西学院大学) 「”第三世界美学”と侯孝賢映画」
葉月瑜(香港・浸会大学) ダレル・デイヴィス(香港・嶺南大学) 「侯孝賢と中国現代文学」(中国語・通訳付き)
西村正男(関西学院大学) 「台湾映画・侯孝賢と日本」
総合討論:張小虹(台湾・台湾大学) 菅原慶乃(関西大学) 陳儒修(台湾・政治大学) 廖炳惠(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)
15:30-17:20 於・関西学院会館 レセプションホール
『恋恋風塵』 上映
17:30-19:00 於・関西学院会館 レセプションホール
侯孝賢監督講演「私の映画人生」(中国語・通訳付き)
朱天文氏講演「「私と侯孝賢映画」(中国語・通訳付き)
質疑応答
■主催:関西学院大学/台湾行政院文化建設委員会/財団法人自由思想学術基金会
共催/関西学院大学国際教育・協力センター
■その他:無料・一般参加可・申込不要
http://www.kwansei.ac.jp/pr/event/2011/event_20110628_002703.html]]>
座談会「パリ映画生活」(その6)
http://eizoubunka.exblog.jp/15474786/
2011-02-09T06:06:00+09:00
2011-03-16T20:32:02+09:00
2011-02-09T01:31:08+09:00
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未分類
窪:久保君はこの半年近くですでに200本以上の映画を見たそうですが、特に印象に残っている作品は?
久保:やはり見た本数が一番多いので、若松孝二監督の作品が印象に残っていますね。1960年代後半の作品はあまり好きになれなかったのですが、1980年代以降の作品がすごく印象に残りました。内田裕也と宮沢りえがパリで探偵事務所をやっていて、ビートたけしが悪役で出演する『エロティックな関係』(1992)、原田芳雄、桃井かおり、若松映画常連の佐野史郎などが90年代の新宿の閉店するバーを舞台に彼らの60年代の闘争を振り返る『われに撃つ用意あり』(1990)、それぞれ父親が違う4人の姉妹が共同生活し複雑な関係とバブルの雰囲気を感じる『キスより簡単』(1989)が特に面白かったですね。 また、ラリー・クラークというアメリカの映画監督のレトロスペクティブが行なわれた際に見た『アナザー・デイ・イン・パラダイス』(1998)も印象に残っています。車のなかで旅をやめようと考えている際のボビーの顔と、ラスト麦畑のなかに逃げて行くシーンの撮り方の綺麗さと物語の内容があいまって泣いてしまいました。
他にも日本でもやっていますが行ったことのなかったLGBTの映画祭に行って見た作品も記憶に残っています。2つぐらいを除き、大体あまり面白くなかったのですが(笑)。
窪:パリでは監督によるトークや、観客を交えた討論といったイベントも日常的に行われているそうですね。
久保:それに関しては、Forum des imagesで、アレクサンドル・ソクーロフの『ユベール・ロベール/幸福な人生』(1996)という短編を見たことは印象深いですね。『エルミタージュ幻想』(2002)の習作のような作品で、たぶん日本未公開だと思います。ユベール・ロベールという18世紀後半のフランスの画家と、彼のいくつかの作品(サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館所蔵作品)を扱った魅力的な作品でした。日本の能の舞台もライトモチーフのように登場します。
堀:その上映にはわたしも行きましたが、確かに、ロベールの描く幽玄的な廃墟の美と、能の舞台、それからソクーロフの作風には相通じるところがありますね。エルミタージュ美術館を映すソクーロフのカメラが、いつの間にかロベールの絵の中に入り込んでいくという、映画と絵画の相互浸透のような瞬間が非常に心地よく、わたしもとても気に入りました。ロベールの作品は、ルーヴル美術館でも何点も見られますので、ぜひ本物を見て欲しいですね。
久保:ちなみにその上映ではソクーロフ監督と映画批評家・歴史家のアントワーヌ・ド・ベックとの対談もあり、話はフランス語だったためいまいちよくわからなかったのですが、ド・ベックからの生真面目な質問をのらりくらりとかわすソクーロフ監督の対応や、ソクーロフ監督の角刈りでサングラスをしてロシア語で話すという、ロシアン・マフィアのような感じがすごい印象に残りました(笑)。
窪:ロシアン・マフィア…! 来日したとすれば、まずチケットが取れるか分からないイベントですね。他に人気のある特集上映などは?
久保:現在ヒッチコックのレトロスペクティブがシネマテークで行なわれているのですが、その動員力のすごさには驚かされています。ヒッチコック特集はほかのレトロスペクティブに比べかなり人が多く、上映前のチケット売り場は非常に混雑しています。また、2月には『ブロンド少女は過激に美しく』に次ぐマノエル・デ・オリヴェイラ監督の新作『アンジェリカ』がシネマテークでプレミア上映され、監督自身も来場するそうなのでぜひ行きたいと思っています。しかし、席が取れるかどうかは抽選で決まるので、運次第ですが。その他にもシネマテークではデヴィッド・リンチのレトロスペクティブが行なわれた際にも監督が来場し、トークショーをしていました。
窪:デヴィッド・リンチといえば、昨年の8月から10月に大阪のコムデ・ギャルソンのギャラリー「six」で《Darkened Room》展が開かれました。自作の絵画がスクリーンを囲むという展示形態で短編映画が上映され、とりわけ静止画をコマ撮りの手法でつなげた『The Grandmother』(1970)という作品が面白かったです。私は平日に訪れましたが、夏休み中ということもあり若い人たちが半分以上を占めていたかと思います。
堀:シネマテークのリンチ特集にも、若者が大挙して押し寄せていた感じでしたね。
窪:ところで、つい最近『ゴダール・ソシアリスム』が日本でも劇場公開されました。直前にオスカーを辞退したという話題もあり、多くの文芸誌、ウェブサイトの記事、特集上映、TV企画などでジャン=リュック・ゴダール監督自体に注目が集まっています。パリでは昨年の5月に公開されましたが、どのような反応がありましたか?
堀:フランスでいささか残念なのは、ゴダールの作品そのものよりも、ゴダールという人物が、その行動や発言を含めて、つねに話題を集めてしまうことです。たとえば、『ゴダール・ソシアリスム』という作品よりも、ゴダールその人がカンヌ行きをドタキャンしたーー自分の身に「ギリシャ型の問題」が到来したという謎めいた理由とともにーーことがニュースになってしまう。その結果、誰もがゴダールを知っているのに、誰もゴダールを見ていないという状況が生じてしまう。もっとも、多少の自戒を込めて言えば、日本のように一部に熱狂的な信者がいるという状況もいびつではありますが…。『ゴダール・ソシアリスム』を真剣に見て、なにがしかのインパクト受けている人は、フランスでも一握りだと思います(この作品に関しては、表象文化論学会のニューズレターに書いたレビューや、拙ブログの一連の記事をご覧いただければ幸いです)。
窪:『ゴダール・ソシアリスム』は関西では2月12日から十三の第七藝術劇場で公開されますので、ぜひスクリーンで衝撃を体感していただきたいと思います。
堀:ところで、シネマテークで非常な人気で、連日、長蛇の列だった展覧会《ブリュネット/ブロンド》(Brune/Blonde)はご覧になりましたか? これは先ほども名前の挙がったアラン・ベルガラのキュレーションによるものですが。
久保:はい、展覧会が始まってすぐ、比較的空いてるときに見ました。土・日曜日はいつ行ってもチケット売り場の長蛇の列が外まで延びていて人気にびっくりしました。美術と映画の中の女性の髪、とくにブロンドとブルネットをテーマにした展覧会で、訪れた人はまず侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の『ミレニアム・マンボ』(2001)に迎えられます。ヒッチコック、ゴダール、ブニュエルなどをはじめ映画の抜粋も無数にあり、映画だけでなく絵画やパフォーマンス(マリナ・アブラモヴィッチなど)もたくみに取り入れた分かりやすくて楽しい展覧会でした。最後の方の部屋では、アッバス・キアロスタミ、諏訪敦彦、イジルド・ル・ベスコなど6人の監督がこの展覧会のために作った短編を見ることもできました。
堀:まったく違ったアプローチがなされていていま久保君が挙げた3つの作品が特に面白かったですが、キアロスタミの『NO』には見事に一本取られたという感じがしました。
窪:展覧会が1月半ばで終わったので、ウェブ上で作品が見られるようになっていますね(キアロスタミ『NO』、諏訪敦彦『黒髪』、イジルド・ル・ベスコ『Bette Davis』ほか)。ところで、パリでは、近頃どのような日本映画が上映されていますか?
久保:現在フランスではスタジオ・ジブリの米林宏昌監督による『借りぐらしのアリエッティ』が公開されています。また12月には北野武監督の『アウトレイジ』も公開されていました。私はどちらも日本ですでに見ていたのでフランスでは見ていないのですが、フランスに来てから主に古い日本映画をたくさん見ています。先ほども言いましたが、シネマテークの若松孝二と足立正生のレトロスペクティブでは30本ほど見ましたし、パリ日本文化会館という施設で行われた美術監督の木村威夫特集にも足を運びました。
堀:若松特集はまさに通い詰めたという感じですね。パリで見た映画の7本に1本は若松じゃないですか(笑)。2月末にやるフィリップ・グランドリユーが足立正生にインタヴューしたヴィデオ作品は、ちょっとお手伝いしたという個人的な事情もあり、面白そうだなと思っています。グランドリユーは『Sombre』(1998)や『La Vie nouvelle』(2002)など、見る者の身体感覚にじかに訴えかけてくるような瞠目すべき作品を撮っている人で、最新作の『Un lac』(2008)は日本でも上映されるかもしれないと聞いています。ところで、シネマテークではその前に生誕100周年ということで黒澤明特集があり、パリ日本文化会館では昨年の11月末から12月にかけて、現在の映画に焦点を当てたKINOTAYOという映画祭もありました。後者の映画祭では、昨年、関大でも講演していただいた船橋淳監督の『谷中暮色』も上映されました。
久保:日本に帰ってからでもある程度見られるかと思い、結局KINOTAYOには一度も行かなかったのですが、なかなか面白いプログラムでしたね。
窪:去年の7月のパリ・シネマという映画祭でも、日本特集がありましたね( このサイトを参照)。上映作品リストを見ると、「作家」としてすでに名を成している監督の作品だけでなく、若手監督やより目に付きにくい作品もきちんとフォローしていて勉強になります。
堀:パリではありませんが、毎年4月にはフランクフルトでNippon Connectionという大規模な映画祭も開かれています。こうして見渡してみると、ヨーロッパでも相当数の日本映画を見られるわけですが、ほとんどが映画祭などの特殊上映という機会で、普通に映画館で上映される日本映画はむしろ減っているような気がします。むしろ、中国のジャ・ジャンクーやワン・ビンとか、フィリピンのブリランテ・メンドーサとか、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンの方が注目を浴びているのではないでしょうか。もちろん、これは日本映画がすでに確固たる地位を占めていることの裏返しかもしれませんが。
おわりに
窪:ここまで留学に至るまでの経緯、パリでの日常生活、大学での研究と教育、映画を見る環境をめぐって話を伺いました。おかげさまで、映画を中心としたパリでの文化体験を、具体的にイメージすることができました。最後に、総括の言葉をお願いします。
久保:フランスの日常生活や文化・芸術が受容されている様子、たくさんの映画館やそこで見るさまざまな国の映画や、実際に見に来る人々の様子などを長期間生活しながら体験できるのはやはり貴重だなと思います。また大学での授業の数や教授陣や図書館も充実しているので映画を勉強するにはいい環境だなと思います。確かにフランス語がある程度できないと授業もわからないし、フランス語の映画、字幕すら読めないわけですが…。そこまで深く考えなくてもとりあえず映画が文化としてしっかり根付いていることを肌で感じられるので、ぜひフランスに来たり、留学したりしてほしいですね。
堀:留学は準備も大変だし、語学の面でも、経済的にも、特に学部生にとってはなかなかハードルは高いと思います。わたし自身、学部生だった頃は、パリで1ヶ月間ホームステイをしたことがあるだけでしたが、それでも得るものはたくさんありました。もちろん、単に物見遊山的に海外を経巡ればよいというわけでは決してありませんが、フランスに限らず、興味を持った土地にはぜひじかに肌で触れてみるという体験をしてほしいですね。
窪:本日はお忙しいなか、どうもありがとうございました。
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座談会「パリ映画生活」(その5)
http://eizoubunka.exblog.jp/15474783/
2011-02-09T06:05:00+09:00
2011-02-09T05:54:06+09:00
2011-02-09T01:29:29+09:00
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窪:では次に、映画を見る環境についてお話を伺いたいと思います。日本の場合、大阪と東京を比較しても、映画館の多さ、特集上映の頻度などに差があります。パリの映画環境はどのような感じでしょうか?
久保:映画館で映画を見る都市としてパリはやはり素晴らしいと思います。パリ20区内には約80の映画館がひしめいていて、シネコンもあれば、単館の映画館もあります。加えてシネマテーク・フランセーズやForum des imagesなどもあるので本当に映画館で映画を見る環境が整っています。上映する映画も多種多様で、日本よりも様々な国の映画を見れると思います。作品の種類としてはドキュメンタリー作品やコメディー作品が日本より断然多いように感じます。 堀:日本ではいわゆるミニシアターの経営が風前の灯火であるという話が最近よく聞かれますが(今に始まった話ではないんですが)、パリにはシネコン(主にゴーモンとパテの系列)も増えましたけど、個性的な映画館もたくさんありますよね。アメリカ映画の旧作を専門的にかけているアクシオン系の映画館とか、トロワ・リュクサンブールとかパンテオンといった単館上映に近い興行をする映画館とか。最近、トロワ・リュクサンブールでヌリット・アヴィヴの『Traduire』という、ヘブライ語から別の言語への翻訳者たちにインタヴューした興味深い作品を見ましたが、たとえばこの作品はここでしかやっていませんでした。
久保:堀先生がお住まいのモンパルナス界隈は、映画館が集中している地区でもありますね。
堀:近所なので割とよく行くレンヌ通りのアルルカンとか、モンパルナス大通りのセット・パルナシアンとかは、内装も客層もいささかブルジョワ的にすぎますが(その極めつけが、7区の唯一の映画館でもあるジャポニスム建築のラ・パゴドでしょう)、ハリウッドの超大作でもなく、純然たる単館作品でもない、中間的な規模で興行している作品がよくかかっています。かつては映画作家だったマラン・カルミッツが率いていたMK2というチェーンも、座席数の少なめのシネコンという感じで、作家系・独立系の作品を多く上映しています。非常に大雑把に言えば、日本のミニシアターで単館上映に近いかたちでかけられるような作品が、パリでは5館くらいでかかっている感じがして、それだけ観客の層も厚いという気がします。
窪:映画館での鑑賞料金についても、学生という立場からは気になるところです。
久保:パリの映画料金は、大人が大体8〜10ユーロ、学生の映画料金が5〜7ユーロ程度です。私は作っていないのですが、月額20ユーロでパリの映画館の約 80館中の約50館で無制限に映画を見れるパスがあります。入会も非常に簡単で、多くの人がこれを活用してたくさんの映画を映画館で見ているように思います。シネマテークやForum des imagesなどにも年間パス制度があり、パスさえ作ってしまえばいくらでも見放題なので、やはり映画館で見る環境が整っているなと感じます。一方、日本ではどこにでもあるレンタルビデオ・DVD屋さんをパリではほとんど見かけません。二、三度たまたま見かけましたが、どこも規模が小さく、人もあまりいないように思いました。むしろこちらはDVDの値段もそんなに高くないので、レンタルよりも買ってしまう人の方が多いように感じます。
堀:シネフィルの間で有名なVIDÉOSPHÈREというレンタル屋がリュクサンブール公園のそばにあるのをご存じですか。京都にあるヴィデオ専門のレンタル屋のふや町映画タウンにちょっと通じるところがある。ただ、VIDÉOSPHÈREのレンタル代は結構高くて、下手をすると映画館の料金の方が安いくらいなので、映画館にかかりそうにないものが、どうしても緊急に必要な場合にお世話になるという感じですね。また、インターネット経由のVOD(ヴィデオ・オン・デマンド)も、日本よりはずっと普及していると思います。
久保:VIDÉOSPHÈREのサイトを見てみましたが、結構高いですね。パリの中心地にあるので、TSUTAYAの堂島店のようなものと考えればいいのですが、こちらでは学生だと普通に映画館で一本見ることのできる値段ですね。当面はシネマテークにある図書館や、Forum des imagesのコレクションルームで間に合いそうです。VODは日本もケーブルテレビやひかりTVなどあることはあるのはずなのですが、普及していないですよね。Apple TVが出たことで状況が変わるのかもしれませんが、レンタル屋がたくさんある日本ではなかなか難しいのですかね?
窪:深夜まで開いているレンタルショップが至るところにありますからね。同じインターネット経由といっても、VODよりはウェブ上で予約すれば自宅のポストに届くネットレンタルが多用されています。きちんとパッケージなり商品を手に取る安心感があるのかもしれません。ところで、パリでは新作映画だけでなく、旧作もスクリーンで見る機会が多いそうですね。
久保:先ほど名前のあがったアクシオン系列の映画館などでもアメリカ映画の旧作が見られますが、パリ第3大学にはCinémathèque universitaireがあり、専用の教室で10月から5月まで、1日2本のペースで映画史の古典的な名作がかけられています。年間パスが30ユーロと非常に安いです。しかし、部屋自体は100席程度あるにも関わらず、残念ながら見に来る学生の数はあまり多くないです。10人いれば多い方で、普段は4、5人しかいないという状況です。
堀:以前はさすがにもう少し見に来る人が多かったと思いますね。若者が映画を見なくなって、映画がいよいよ伝統芸能化しているということなのかもしれません。 Cinémathèque universitaireはなかなか貴重なプリントを持っているし、他でなかなか見る機会のない映画が上映されることも多いので貴重な場だと思うのですが、物心ついた頃からDVDを見て育った世代にはアピールしないのかもしれません。
久保:シネマテーク・フランセーズにはほぼ日参しているのですが、僕が見る限り、とりあえずなんでも貪欲に見るといった若いシネフィルはわずかしかいないように感じます。特にあまり知られていない古い監督の映画が上映されるときには、観客の年齢層の高さを感じます。また、日本人はよく見かけますが(とはいっても10人もいませんが)、アジア系やアフリカ系の風貌がほとんどいない気がします。アジア系はSalle Langloisという一番大きなホールでも自分一人だけしかいないということもよくあります。エドワード・ヤン特集の際はアジア系の人を、若松孝二特集の際は日本人を、それぞれよく見かけましたが、それ以外では本当にヨーロッパ系の人々、しかも年配の方々が見に来る場所だなという気がします。Forum des imagesも同じ傾向にあると思います(もちろん人口比もありますが、普通のシネコンだとアフリカ系、アジア系の人もそれなりに見かけます)。
堀:「シネフィル」という鑑賞のモードそのものが、主として20世紀後半のある時期にのみ出現した歴史的な現象だったのかもしれないですね。
久保:パリ3の映画上映でも本当に人が少ないですし、みんなどこで映画見てるんだろうかと正直不思議に思いますね。シネマテークの図書館に行くと若い人がほとんどなのですが、上映室になるとなぜあんなに年齢層が上がるのか謎です。といっても、ヒッチコックやデヴィット・リンチの特集には若い人もどっと押し寄せているので、監督や作品によるのかも知れませんね。
窪:学生どうしが集まると、最近何を見たかで盛り上がります。ただ、日本は映画の料金がやっぱり高いので、そうそう映画館ばかりで見るわけにもいきません。スクリーンで大量の映画を手軽に見られる環境が整っているというのは羨ましい限りです。
堀:シネマテークには、映画上映施設だけでなく、映画図書館(Bibliothèque du Film)という図書館もありますね。ここは、映画に関する相当数の書籍や雑誌を所蔵しているのはもちろんですが、ヴィデオテークでDVDを自由に見ることもできるし、研究者がアーカイヴ資料を直接調べることも簡単にできます。また、多くの紙資料がデジタル化されてもいて、たとえばある作品について公開時のプレスの反響なんかを調べたければ、このカタログでタイトルを入れて、「revue de presse numérisée」というのが出てくれば、それである程度網羅的に見渡せますので重宝しています(もちろん、館内でしか閲覧はできませんが、コピー代を払って印刷してもらうことは可能です)。
久保:Forum des imagesの隣にあるフランソワ・トリュフォー図書館ーー元々レンヌ通りのアンドレ・マルロー図書館に所蔵されていたものが2008年に移転してできたそうですがーーも、ほぼ映画専門の市立図書館で、膨大な量の書籍だけでなく、DVDや映画のサントラCDなども置いています。Forum des imagesやシネマテークで行なっている特集の本や新刊図書をわかりやすく展開してくれていたり、独自の本紹介などもあって面白いです。またDVDの館内視聴はもちろんのこと、シネマテークの図書館とは違って本を借りることができますし、年間費60ユーロ程度かかりますがDVDとCDも貸りることもできます。館内には一つ上映室があり映画を毎週何度か上映しています。今年9月には追悼でクロード・シャブロル特集をやっていたりもしました。
ちなみに僕が住んでいる近くには、今年シネマテークでレトロスペクティブが開催されたジャン=ピエール・メルヴィルの名前がついた市立図書館・メディアライブラリーがあったりして、映画文化の浸透ぶりが感じ取れます。(続きは、「6.映画三昧の日々」へどうぞ。)
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座談会「パリ映画生活」(その4)
http://eizoubunka.exblog.jp/15474780/
2011-02-09T06:04:00+09:00
2011-02-09T05:54:06+09:00
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窪:では次に、パリの大学でどのような映画の研究と教育が行われているのかという話に移りましょう。まず、パリのいくつかの大学での映画研究の概況についてお話ください。
堀:パリとその近郊には、パリ第1大学からパリ第13大学までの大学があるわけですが、映画を学べるのは、そのうちパリ第1、第3、第7、第8、第10大学ですね。 パリ第3大学(いわゆるソルボンヌ・ヌーヴェルですが、所在地であるサンシエと呼ばれることも多い)の映画学科は、ヨーロッパだけでなく世界的にも随一の規模だと思います。ジャック・オーモンやミシェル・マリーといった、1970年代の映画学科の創設期からのメンバーが今では第一線を退き、映画の美学の分野に限って言えば、フィリップ・デュボワが中心的な位置を占めているといってよいでしょう。元々彼の教え子だったバルバラ・ルメートルや、エマニュエル・シエティもここで教鞭を執っていますし、デュボワとも関心が近く、とりわけアヴァンギャルド映画に詳しいニコル・ブルネズが最近、パリ第1大学から教授として移籍しました。
わたし自身は彼らの研究に最も興味を持っていますが、もちろん、彼らのような、より理論的な傾向の強い研究分野・手法だけが幅をきかせているわけではなく、他にもローラン・クルトンは「映画の経済学」の第一人者ですし、フランソワ・トマをはじめ、着実な映画史的な研究を推進している一派もいます。また、元々『カイエ・デュ・シネマ』などの批評家として出発したアラン・ベルガラやシャルル・テッソン、ドキュメンタリー映画を専門とするフランソワ・ニネーや、精神分析的なアプローチを得意とするミュリエル・ガニュバンといった教授陣も有名です(テッソンを除く3名は、遠からず退職する年齢ですが)。
窪:映画に関する書籍や論文でしばしば目にする著名な方々の名前が一挙に挙がりました。パリ第3大学以外の大学では、どのような感じで映画研究が行われているのでしょうか?
堀:他の大学についてはさほど詳しいわけではありませんので、これから述べることには勘違いも含まれているかもしれませんが、他大学では基本的に、映画も含めた芸術学科のようなところで映画研究を選択できるという具合になっています。たとえば、パリ第8大学(サン・ドゥニ)では「諸芸術、哲学、美学」というUFR(教育研究ユニットの略称ですが、おおむね学部に相当します)で映画もやっています。今年度(2010-11年度)にパリ3から移籍したクリスタ・ブリュムリンガーは古典的な映画だけでなく、実験映画やニューメディアにまたがる興味深い研究をしていますし、映画と歴史がテーマのクリスチャン・ドゥラージュや、たとえば映画と彫刻といったようなユニークなアプローチが面白いシュザンヌ・リアンドラ=ギーグ、ニューメディアの作家でもあるジャン=ルイ・ボワシエなどが在籍しています。セルジュ・ル・ペロンも教授のようですが、この人は五月革命の際に「シネリュット」という組織でいわゆる「戦闘的映画」を作っていた人ですね。ジャン=ルイ・コモリが教鞭を執っていたこともあり、また大学そのものが五月革命の余波を受けて設立されたこともあって、理論と実践の連動が積極的に模索されており、教員に実作者が多い印象があります。
窪:日本の場合は、映画を学ぶ大学や大学院といっても、理論的なアプローチと製作が連関している大学や大学院はさほど多くない印象です。
堀:実作と理論・歴史研究の棲み分けがありますからね。でも、それは日本に限ったことではないし、映画に限った話でもないと思います。パリの他の大学に話を移すと、パリ第1大学(パンテオン・ソルボンヌ)では、映画学科というよりは、美学科のようなところで映画も学べるという感じになっています。内部事情を知っているわけではありませんが、教授陣のリストを見る限りでは、映画の分野ではドミニク・シャトーやダニエル・セルソーが著名です。ゴダールについての研究書のあるセリーヌ・セママは個人的にも知っています。他にも、ニューメディア研究で知られるアンヌ=マリ・デュゲも在籍しているようです。パリ第1大学には、歴史家として『夜と霧』研究などのすぐれた成果のあるシルヴィ・リンデペルクがディレクターを務め、ジャック・タチ研究などで知られるステファヌ・グデや、アメリカ映画研究のクリスチャン・ヴィヴィアニらが在籍する研究グループも別途、存在しています。パリ3に移ったブルネズはそこに在籍していました。
窪:他の2つの大学についてはいかがでしょうか?
堀:パリ第7大学(ドゥニ・ディドロ)では、文学・芸術・映画をひとくくりにしたLACというUFRが映画の研究・教育を担っています。元々、後述する映画図書館の館長だったマルク・ヴェルネや、主にハリウッド映画について多数の著書のあるジャクリーヌ・ナカッシュやピエール・ベルトミウー、黒沢清についての著書もあるディアーヌ・アルノーらがいます。パリ第10大学(ナンテール)では「諸芸術と表象の歴史」という名の研究チームが、美術史や演劇学と並んで、映画の研究・教育も担っているようです。その教授陣のリストを見る限りでは、イタリア映画を専門とするローランス・シファーノがよく知られているほか、ゴダールの評伝をはじめ膨大な著書のある歴史家のアントワーヌ・ド・ベックが着任したようですね。
窪:パリは映画研究の層が厚いのですね。久保君は、最も規模の大きいパリ第3大学に在籍中ですが、具体的な講義の様子やその内容についてはいかがですか?
久保: パリ第3大学の映画・視聴覚研究科には、映画・視聴覚に関する実にさまざま領域の授業があります。映画作品の分析や個々の監督の研究はもちろんのこと、映画批評を書くための授業や、より広範な芸術・美学の授業、映画の経済的・法学的・社会学的な側面の分析など、映画と関連のあるものならほとんどあると言っても過言ではないと思います。
カリキュラムとしては、1年生のときは映画芸術・美学の理論や映画の経済的な側面や論文の書き方など基本的なことを全員が学ぶようになっており、授業の選択はほとんどできないようです。2年生になると少し選択の幅が広くなりますが、やはり映画・視聴覚の基礎知識を徹底的に学ぶという設定になっています。そして3年生になるとやっと様々な授業を選べるようになっているように思われます。
窪:履修のシステムも、日本の大学とは大きく異なるということをお聞きしました。
久保:パリ第3大学の履修はどこの研究科もなにやら先着順履修なようで、履修日には学生たちが大挙して並んでいました。しかし、何やら1人ずつ相談しながら決めていくようで、これが全く進まない。留学生向けの履修登録日は人数が少ないはずなのに、僕も3、4時間ぐらいならんでやっと授業を履修しました。また、この授業は定員に達したので取れませんと言われたりもしたので、先着順の授業もあるようですね。しかも、こんなに並ばされるのに、最終的な入力にはパソコンを使うんですよね(笑)。ちゃんと最初からパソコンのシステムを作れば並ばなくてすむのにと思いました。
窪:早いもの勝ちで授業が決まってしまうこともあるのですね。実際に授業が始まってから、何か日本との差を感じましたか。
久保:学部(Licence)の授業を取っているのですが、語学の要素を除いては、授業のレベルはさほど変わらない気がします。もちろん、完全に聞き取って理解しているわけではないので、雑駁な印象にすぎませんが。こちらの授業では、レジュメが配布されることが基本的にはないので、理解がさらに難しいのかもしれません。僕は授業を4つ受けているのですが、どの授業でもレジュメは配布されません。授業の進め方としては、先生が講演会のようにひたすら話し続け、ときおり、質問を受け付けるというスタイルです。それが2時間続きます。
窪:日本では、レジュメやパワーポイントが使われることがほとんどですね。フランスの授業は、講演会のようなイメージなのでしょうか。現在履修中の講義内容を具体的に教えて頂けますか?
久保:映画に関する講義は、途中で朝早すぎて諦めたものがあり、2つしか受けていないという低たらくなんですが、1学期に受けていたのは、日本でも何冊かの著書が翻訳されているミシェル・シオンによる1920年代から現代までのフランスのミュージカル映画を概観するという授業と、アラン・ベルガラによる俳優の演技とルノワールやブレッソン、ストローブ=ユイレなど複数の監督術を検討していくというものでした。シオンの授業はネット上で映画作品と参考文献はあがっていましたが、授業中に配布ではなかったですね。
窪:シオンの『映画にとって音とは何か』(川竹英克・J.ピノン訳、勁草書房、1993年)は面白い本でしたね。堀先生の学生時代での印象深い講義がありましたら、お聞かせ下さい。
堀:そうたくさんの授業を受けていたわけではなかったのですが、やはり指導教授でもあったジャック・オーモンの博識きわまる講義や、フィリップ・デュボワの figureという概念の映画への応用をめぐる講義(彼の講義はめずらしく資料集が用意されていました)は印象に残っています。レイモン・ベルールも当時はパリ3で授業を受け持っていました。授業は真剣に受けるとなると一つ増えるでもかなり大変なので、手っ取り早く感じをつかむために、単発の講演会やコロック(シンポジウム)に足を運ぶこともよくありました。(続きは、「5.映画を見る環境」へどうぞ。)
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座談会「パリ映画生活」(その3)
http://eizoubunka.exblog.jp/15474773/
2011-02-09T06:03:00+09:00
2011-02-11T08:03:18+09:00
2011-02-09T01:27:40+09:00
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窪:ところで、バルセロナといえば国外旅行ですよね。日本で海外旅行というと贅沢で大がかりなイメージがありますが、安値でヨーロッパをまわることができるのもパリ滞在の利点かもしれません。
堀:その通りですね。パリはヨーロッパの鉄道網・航空網の要所の一つなので、フランス国内だけでなくヨーロッパ内のどこに行くにもアクセスが良好です。日本は島国なので、鉄道で海外に行くことは今のところありえませんが、パリからだとドイツ(の西側)、スイス、ベネルクス三国、そしてロンドンも、鉄道で気軽に行けるのが魅力でもあると思います。 久保:確かに、フランス国内の鉄道網は日本ほどではないにしても充実しています。しかも、日本に比べて鉄道料金が全般的に安いのも嬉しいです。日本とは違って、フランスの鉄道は予約する時期によって値段がかなり違ってくるので、あまり予定を立てるのが好きではない僕のような人間にとってはなかなか難儀ですが…。また、フランスの鉄道では、カルト12−25という25歳までの若者が買える割引カードがあります。このカード自体を買うのに約50ユーロかかりますが、一度買うと1年間はフランス国内の列車移動が基本的に50%引きになります。私はこのカードを利用し、フランス第二の都市のリヨン(リュミエール博物館があります)とアヌシーというスイスとの国境近くにあり、例年6月にはアニメーション映画祭が行なわれている街に行きました。
堀:そういえば、このサイトはヨーロッパの鉄道網がかなり網羅されていて面白いですよ。バルセロナは飛行機で行くんですよね。
久保:はい。2ヶ月前にLCC(ローコストキャリア)の航空券を買って、往復48ユーロでした。他にもLCCはいっぱいあるので(このサイトが分かりやすく説明しています)、探せばもっと安いチケットもあると思います。計画を立てながら、値段の面でも時間の面でも、ヨーロッパ内、EU圏は近いのだなと感じました。
窪:交通の利便が良いと、ヨーロッパ各地の展覧会に足を運ぶことも容易ですね。フランス国内外を問わず、印象に残った展覧会などはありますか?
堀:今回の在外研究の目的の一つが、ニューメディア研究の一環として、いわゆる映像系のアート作品をなるべく多く見て回ることでもありましたので、わたしも時折、ヨーロッパ各地に出張しました。そのうち、ドイツのカールスルーエというところにあるZKMでの展覧会《fast forward 2》については、自分のブログに書いたレビューがありますが、ケルンのルートヴィヒ美術館の映像コレクション展(《Moving Images》)や、ロンドンのテイト・モダンの監視映像をめぐる《Exposed: Voyeurism, Surveillance and the Camera》という展覧会、パリではオルセー美術館で催された《罪と罰》展もなかなか面白いものでした。それ以外にとりわけ印象に残っているのは、フランス北部のリール近郊にあるル・フレノワと、ブリュッセルにあるWielsという施設でのフランシス・アリス展です。
窪:具体的な展示内容をいくつか伺えますか。
堀:ル・フレノワでは、昨年の4月までやっていたティエリー・キュンツェルとビル・ヴィオラという2人のヴィデオ・アーティストを対比させた展覧会(レイモン・ベルールのキュレーション)と、ベルギーの現代美術を展望する《ABC: Art Belge Contemporain》という展覧会(ドミニク・パイーニのキュレーション)を見て、どちらもなかなか充実していました。この2月からは実験映画界の大御所マイケル・スノウの展覧会が始まります。ル・フレノワはリールから地下鉄で行くか、リールから数駅先の国鉄駅ルーベから歩くこともできます。いずれにせよ、容易に日帰りで行ける距離です。
もう一つのWielsは、さかのぼればビールの醸造所だった場所、ブリュッセル南駅から少し南に行った、まったく観光地ではない場所に、2007年にオープンした現代美術センターです。フランシス・アリスの映像作品は、彼のホームページでも何作品も見られますし、日本の展覧会でも見たことのある人もいると思います。水性のペンキを垂らしながら街を歩くとか、メキシコの路上で眠っているイヌを映すとか、都市の漂流が一つの軸になっていて面白いと思います。Wielsでは2月半ばからダヴィッド・クラエバウトの回顧展が開かれます。わたしはこれまで実際に目にする機会のあった作品はわずか数点にすぎませんが、そのクオリティには強い印象を受けており、回顧展が楽しみです。
久保:バルセロナにも行かれていましたよね?
堀:バルセロナはガウディの建築(サグラダ・ファミリア、グエル公園、カサ・ミラなど)をはじめとして、見所がたくさんありますが、現代美術に関しては MACBA(バルセロナ現代美術館)があり、そこで《Are You Ready for TV?》というテレビについての展覧会を見ましたが、物量作戦に頼った展覧会でちょっと残念でした。こちらはもう終わってしまいましたが、シチュアシオニストのギー・ドゥボールとも近しい関係だったジル・ヴォルマンの回顧展の方が面白かったくらいです。
窪:次の話題に移るまえに、これから足を運ぼうとしている展覧会を教えて下さい。
堀:他にヨーロッパで注目の展覧会と言えば、マドリッドのソフィア王妃芸術センターで開催中の《アトラス》展でしょうか。ジョルジュ・ディディ=ユベルマンという著名なフランスの研究者によるキュレーションが話題を呼んでいます。パリでは、2月5日から始まった、パレ・ド・トーキョーでのアモス・ギタイによる《Traces》というインスタレーションと、3月からジュ・ド・ポームで開かれるアーノウト・ミックの展覧会に期待しています。(続きは、「4.パリにおける映画の研究と教育」へどうぞ。)
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