座談会「パリ映画生活」を、6回に分けてお届けします(出席者:久保幸治、窪友里、堀潤之)。
1.留学に至るまで 2.パリでの生活 3.パリからヨーロッパへ 4.パリにおける映画の研究と教育 5.映画を見る環境 6.映画三昧の日々 はじめに 窪:この座談会では、現在パリに長期滞在中の久保君と堀先生に、映画を中心としたパリでの生活についてざっくばらんにお話しを伺いたいと思います。司会は、大学院の同期である窪が務めます。まず、ごく簡単に自己紹介をお願いします。 久保:関西大学大学院文学研究科総合人文学専攻映像文化専修M2の久保幸治です。日本では堀先生のゼミに所属し、主にフランス映画について勉強・研究をしています。修士論文では、フランスの映画監督ロベール・ブレッソンについて書きたいと思っています。2010年9月から、関西大学の交換留学制度を利用し、パリ第3大学の映画・視聴覚研究科に1年間交換派遣留学をしています。フランスに来たのは二度目で、大学2回生のとき、アンジェに約1ヶ月留学したことがあります。 堀:わたしは関西大学文学部の映像文化専修というセクションで、フランス映画を中心とする映画史・映画美学を講じています。2010年4月から大学から在外研究の機会を得て、1年間パリに来ています。2001年から2003年まで、久保君と同じパリ第3大学の映画・視聴覚研究科の博士課程ーー当時は、その初年度がDEAと呼ばれていたわけですがーーに留学していたので、およそ6年半ぶりのパリ滞在になります。今回はパリ第3大学ではなく、レイモン・ベルール氏にお世話していただいて、CNRS/EHESSのCRAL(諸芸術と言語についての研究センター)という組織に籍を置いています。 窪:申し遅れましたが、私は同じく堀先生のゼミに所属するM2の窪友里です。修士論文ではベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)を取り上げました。久保君とともに、映像文化専修の大学院一期生です。 1.留学に至るまで 窪:さて、久保君がパリに行ってからもう半年近くが経とうとしています。そもそもどうしてパリに留学しようと思ったんですか? 久保:修士論文をロベール・ブレッソンについて書こうと思っていたので、フランスの方が当然資料がたくさん揃うと思ったのがまずあります。実際、こちらに来て学校や図書館、本屋・古本屋などで関連の本や雑誌などの資料が日本より容易に手に入ります。1950年代に出版されたブレッソンに関する本も、さっそく古書で入手しました。また、書物などを通じて聞き知っていたパリの映画文化の豊かさを実際に体験したかったということも理由にあります。さらに大学院入学前の時点で、留学をするなら同時期に堀先生がフランスにいらっしゃるかもしれないということを伺っていたので、それも留学を決意する後押しになりました。 窪:パリにわたって本格的に映画を学ぶという機会は漠然と願っていても実現することではありません。すでに大学院進学時点で留学が念頭にあったということですが、関大の交換派遣留学はどのような制度なのですか? 久保:関大のフランスの大学の協定校は3校あり、交換派遣人数はパリ第3大学が3名、パリ第7大学が2名、アンジェにある西カトリック大学が2名です。パリの2校にはともに映画学科があります。関大の派遣留学の大雑把な日程を表にまとめると、以下のようになると思います。
窪:この過程で特に何が大変でしたか? 住居選びに苦戦していた印象がありますが。 久保:各種の煩雑な書類を仕上げるのもそれなりに大変ですが、やはり住居を探すのが一番骨が折れると思います。現在フランスへのビザを取るためには住居証明が必要なので、まずフランスでの住居を決めないといけません。以前同じ制度で交換派遣留学していた方の話ではパリの大学が住居を決めるメールをくれるから大丈夫だと言われていたので、のんきにしていました。しかし、パリ第7大学は大学側が住居を割り当ててくれていましたが、パリ第3大学は自分で探さないといけませんでした。パリの住居を探しは非常に難しいと聞いていたので、心配になって周りの人に騒ぎまわっていたというわけです…。幸運にも私はMixiのパリ賃貸板で日本の方が貸しておられる現在のアパートを見つけました。 他のパリ第3大学に交換留学の方々は1人が日系の不動産会社を利用、もう1人がフランスのフリーペーパーをネット上で見て、大家に直接コンタクトを取って住居を見つけていました。 堀:完全な売り手市場なので、パリでの住居探しは本当に気が滅入りますね。わたしも日本にいるあいだにインターネットで探して決めましたが、満足の行く物件を探し当て、実際に契約にこぎ着けるまでにはかなりの労力がかかりました。ところで、パリの南端にあって、各国の寮が合わせて30数館ほど集まっている大学都市(Cité Universitaire)は、個人でも応募できませんでしたか? 久保:大学都市には個人でも応募可能です。しかし、自分で住居を探さないといけないと気付いたのが遅かったために、すでに募集の締め切りが終っていたと思います。大学都市に住んでいる人に話を聞くと、他の国の留学生たちとの交流があるようですし、家賃も安いようなのでやはり寮は魅力的ですね。 窪:留学というと、言葉の苦労がつきものですが、その点についてはいかがですか? 久保:自己紹介にも書きましたが、大学2回生のときに約1ヶ月、関西大学の短期語学留学でアンジェに留学していたことがあります。しかし、その後あまり真剣にフランス語に触れていなかったので、こちらに来てから苦労しています。大学の授業も正直に言えばあまり細かくは理解できていません。フランス語能力は交換派遣留学試験でも試験がありますし、日本にいるときからフランス語を勉強するにこしたことはないです。しかし、日常生活をおくるうえでは語学はある程度で意図は通じますので、深く考えず飛び込んでみてフランス語をどんどん勉強するのもいいのかもしれません。 窪:生活しながらだとフランス語を覚えるのも早そうですね。日常生活といえば、生活にかかる費用は日本からどのように持ちこみましたか? 久保:1ヶ月ぐらいは困らないぐらいの15万円ほどのお金を両替し、現金で持ってきました。残りはフランス到着後すぐこちらで銀行口座を作り、両親に国際送金してもらいました。フランスはカード社会で少額でもカードで払ったりするので、現金はそんなに持ち込まなくてもいいかもしれません。一緒に来ている他の留学生はトラベラーズチェックを利用したり、国際キャッシュカードで下ろしたりする人もいます。 堀:今は円高・ユーロ安の時期なので良かったですね。両替や送金にもそれなりのコストがかかりますが、為替レートの違いが一番大きいですから。 窪:久保君とはパリ到着後すぐに連絡が取れた記憶があります。国際間の連絡には不可欠なネット接続や、パリ市内で使用するため携帯電話の入手は容易なのですか? 久保:私が契約したアパートは部屋貸し(フランスではよくある)で最初から電話とインターネットが使えたので、日本ともすぐ連絡が取れました。他の留学生は自分で電話とインターネットを契約する必要があり、大変そうでした。たぶん解約とかも大変なんだろうと思います。携帯電話は日本に帰国した人が置いていったプリペイド式の携帯をもらい、使っています。買ったとしてもそこまで高くはないですし、契約もいらないのでプリペイド式ならフランスでも簡単に手に入れられます。 窪:なるほど。パリ到着後の具体的な生活事情が登場したところで、話題をパリでの生活全般へと広げたいと思います。(続きは「2.パリでの生活」へどうぞ。)
by eizoubunka
| 2011-02-09 06:01
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