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舩橋淳監督講演会参加記
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編集委員の怠惰のせいで大変時間がかかってしまいましたが、
関西大学映像文化専修の学生が先日行われた舩橋淳監督講演会の参加記を書いてくれました。



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2010年5月18日、関西大学千里山キャンパスにて、映画監督・舩橋淳氏による講演会「『谷中暮色』 あるいは現代映画の限界」が開催された。ちなみに筆者は生粋の映画小僧であり、運よく最前列の席を奪取することに成功したため、こうして筆を執るに至った。以下はその参加記である。
 まず驚いたのが、監督の映像に向ける眼差しの強さ。スクリーンに投影された映像を、というより光の揺らめきをジッと見つめるその眼差しは、通常我々が知覚しえない「不確かな何か」に向けられている、そんな気がしてならなかった。事実、最新作『谷中暮色』(2009)では、失われた五重塔をめぐって、日本人の信仰なき「抜け殻」集団的な精神性を浮き彫りにしているし、ドキュメンタリーとフィクションの境界、時間や場所を超越した異空間をさまようかのような長回し撮影によって「(谷中の)亡霊」を出現させている。このように監督は『谷中暮色』でドキュメンタリーとフィクションの臨界点を模索しているが、これは小規模のスタッフによる時間をかけた制作が可能にしたものであり、そこには前作『BIG RIVER』(2005)で大規模な製作チームを組んで劇映画に臨んだ経験と、そこへの反省が大きく関係していると監督は説明してくれた。
もっとも、舩橋監督の映画が素晴らしいのは、日本人の精神性への批判的な視線ではなく、世界の複雑さと向き合うことで生まれる人と人の絆であるように思う。ゆえに監督が切り取った何気ない日常の風景は生の実感で満ち溢れている。そうした意味で、舩橋監督は極めて倫理的な映画作家なのだと思う。
講演会のあと、有志の学生を募って、監督と門林准教授を囲みつつ、昼下がりのお茶会が催された。お茶会には学外の参加者も含めて十数人ほど集まったのだが、非常に残念だったのが、関大一〜三回生の集まりが悪かったこと。おそらく授業と被ってしまったせいだろうけれど、プロの映画監督から直接お話を伺う機会も大事にしてほしい。
お茶会では各々積極的に、主に『谷中暮色』についての質問を投げかけ、議論が白熱する場面も多々見られた。私も二、三質問をしてみたが、監督は嫌な顔ひとつせず、快く答えてくれた。時折、監督の口から飛び出る製作秘話に一同驚いたり笑ったりなど、終始和やかなお茶会だったように思う。
 今回講演会に参加して、本当にたくさんのことを得られた。そのなかでも、舩橋監督の切り開いたドキュメンタリーの境地を少しでも学べたということは、この講演会の最大の収穫であったと思う。(植木友也/映像文化専修4回生)
by eizoubunka | 2010-07-17 21:52 | コラム
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