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パリ留学記
パリ留学記
松本吉弘


 私は現在関西大学の交換留学制度でパリ第3大学に通い映画を研究しています。早くも八カ月が過ぎました。ということで、パリの映画を取り巻く状況を大学・映画館を中心に紹介したいと思います。

 まず大学で授業を受けて感じたことに、世界中の学生が映画を学びに来ているということです。それだけに、授業の量・質とも想像を超えるものがありました。本や雑誌で見かけたたりDVDの特典で解説をしている第一線研究者が教授として授業をやっています。

 授業は映画そのものを取り扱ったもの以外に(これだけでもたくさんの種類があります)、文学や演劇・建築などの隣接する学問領域との関連性を問うものがあり、映画にまつわる経済、社会学、テレビ作品等々数を挙げればきりがありません。

 そして、大学内には映画を定期上映する特別のホールがあります。そこでは週に十本観ることが出来ます。全作品は大学内で所蔵している本物のフィルムを上映しています。それだけに音声が聞き取りにくい時もありますが、レアなフィルムを大画面で味わえる醍醐味は筆舌に尽くしがたいものがあります。

 上映プログラムもまた、授業の内容に沿ったものや特別に企画されたものがあります。パリ現代美術館で吉田喜重監督のレトロスペクティヴがなされた時、監督と彼の妻で女優の岡田茉莉子さんを呼んで、作品上映・討論会が企画されました。また先行上映なども行われます。

 図書館には映画の研究資料が他の学問領域同様豊富にあり、視聴覚ブースでは授業で紹介された作品もすぐに観ることが出来ます。

 またパリには映画研究機関として、シネマテーク・フランセーズという国立の施設があります。そこでは映画資料の保管・収集・展示・上映をしています。ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちが足しげく通った映画館がもとになっており、それだけでも映画研究者や映画ファンにとって感慨深いものがあります。

 ここのフリーパスでは、上映はもとより試写会・展示・討論会・学会・映像図書館(貴重な作品も視聴可)が一年間無料で利用出来ます。国・時代・ジャンルを問わず、シネマテーク選りすぐりの作品が観られるのが魅力です。また、レトロスペクティヴでは特定の監督の全作品が一挙に上映されます。前回はハワード・ホークスで、着いたばかりの時は増村保造の特集がやっていました。

 街にも映画館が多くあります。UGC(映画の製作・配給・上映会社)の年間パスを買うと、小さな映画館でも提携のある館であればそのパスを使い映画を観ることが出来ます。それをうまく利用することで大作映画から作家性の強いものまで自由に楽しめます。

 パリの映画館は夜の10時や11時から上映しているところもあり、仕事帰りのサラリーマンや、夕食後にも気軽に映画を楽しむ環境があり、土曜日・日曜日には子供を連れや老夫婦が仲睦まじく映画を楽しんでいる光景をよく目にします。映画館で映画を観ることが日常の娯楽として受け入れられていることを強く感じます。

 更に、最近のパリでの映画体験として。『ロッキーホラーショー』を観る機会がありました。これは「B級」「カルト映画」と呼ばれるもので世界中に根強いファンがいます。パリでは、恐ろしいことに、毎週土曜日に上映がなされています。

 当日も観客は大入りで、映画館の前に長蛇の列を作っていました。スタッフは作中のキャラクターに扮し、スクリーンの前で歌ったり踊ったり、つっこみを入れます。やり過ぎの観も否めませんが、観客と一体に楽しむ上映スタイルはスペクタクルそのものと言えます。因みに、友達は水をかぶり途中トイレに避難していました。

 このように、パリでは映画を芸術として受け止め、且つ娯楽としても楽しむ習慣を感じることが出来ます。根本に研究者でなくても、ファンでなくてもふらりと立ち寄れる映画がまずある。日本ではどうでしょう? 帰国後考えたいと思います。

【執筆者紹介】
松本吉弘。関西大学大学院文学研究科 総合人文学科フランス文学専修 博士課程前期課程在籍。
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by eizoubunka | 2008-05-30 00:37 | コラム
井土紀州監督上映会&講演会のお知らせ
 5月22日(木)と23日(金)に、関西大学千里山キャンパス凜風館4F小ホールにて、井土紀州監督作品の上映会と監督によるトークを催します。
 どちらの作品も、上映される機会の少ない刺激的な作品なので、ぜひこの機会にご来場下さい。(堀)

5月22日(木)
12:30 開場
13:00 『百年の絶唱』上映
※入場料800円

5月23日(金)
12:50 開場
13:20 イントロダクション
13:35 『LEFT ALONE 1』上映
15:20 監督によるトーク
16:25 『LEFT ALONE 2』上映
※入場無料

※会場は、下図の23番です。
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by eizoubunka | 2008-05-20 23:45 | 専修からのお知らせ