2.パリでの生活
堀:久保君はもうパリの生活にはすっかり慣れたようですが、いざパリに来て生活を始めてみたときには、いろいろと戸惑うこともあったのではないかと思います。久保君はパリの13区、その中でもいわゆる中華街に住んでいるんですよね。 久保:はい、13区にある中華街に住んでいます。中華系のスーパーや中国料理店がたくさんあります。中華系のスーパーでは日本のお米に近い米や味噌、醤油、インスタントラーメンや海苔など日本人になじみ深いものもたくさんあり、その面では非常に助かっています。 窪:確か、スーパーでは各自がエコバックなり袋を持ち込むことをその場で知らされて困っていましたね。 久保:そうです(笑)。大量のものを買ったはいいが、袋がもらえないのはなぜだろうと思いました。ガードマンの人と受付の人に聞いても、着いたばかりでフランス語も伝わらず、おろおろしてしまいました。 堀:袋が課金制のスーパーは確かにありますね。わたしなど、袋をくれるだけでなく、なるべく店員が袋に入れてくれるスーパーに行ってしまいますが(笑)。中華街にはパリでは珍しい高層マンションもありますし、いわゆる絵葉書的なパリとは違った面白味がありますよね。ついでに言えば、パリには他にも中国人地区がありますね。13区の中華街が最大の規模を誇っていますが、アール・エ・メチエ付近にも中華料理屋が建ち並ぶ区画があるし、多国籍な地域のベルヴィル近辺にもコミュニティがあります。 久保:パリには他にもオペラ座付近に日本人街があり、そのあたりにはユニクロやブックオフやジュンク堂(日本の価格の2倍ぐらいしますが…)、日本の食材を扱うスーパーや日本料理店があります(中華系、韓国系の経営による微妙な日本料理店が多いですが)。 堀:ブックオフができたときは驚きました。日本の新書が2ユーロから買えたりしますからね。食事は基本的には自炊ですか? 久保:はい。やはり日本のように外食で500円以内で食べられるものがほぼ全くないので、必然的に自炊になりますね。しかし、野菜や肉などの食材自体は日本よりも安いです。外食もしますが、本当にたまに月一回か二回ぐらいですね。一回で安くても2000円〜3000円ぐらいはしてしまうので。 堀:パリでの外食はヨーロッパでも群を抜いて高いですね。500円で食べられるものとなると、サンドイッチやケバブくらいですからね(でかいのでお腹はいっぱいになりますけど)。とはいえ、値が張る分、レストランの料理の質は、総じて高めであるような気がします。 久保:ケバブは安くていいですよね。リヨンとアヌシーに旅行に行った際は、ケバブばかり食べてました。リヨンにはカレー味のケバブがあってかなりおいしかったです。パリのレストランにあまり行ってはいませんが、行ったところは全ておいしかったです。人に紹介してもらったお店だったりするので、ある程度おいしいのは当然といえば当然なのですが。また、他に良いところとして、パリにはリュクサンブール公園やチュイルリー公園をはじめ、公園がたくさんあります。さすがに今は寒いのであまり人はいませんが、パリに来た当初の暖かい時期は家族連れやカップルや友達同士など多くの人が公園でゆっくりとした時間を過ごしていました。 Wifiもほとんどの公園でとんでいるので、ノートパソコンなどを使ってネットをしている人もちらほら見かけました。 堀:わたしなどできるだけ外気に触れないようにしていますけど、パリは冬の日照時間が短いので、春から秋にかけては皆とにかく太陽を浴びようとしますね。カフェやレストランなどでも、夏だとテラスで食べている人が多いでしょう。あれがあまり理解できなくてね。太陽を浴びて、そよ風が吹いて、心地いいのは分かるんですが、同じくらい排気ガスやら通行人の好奇の視線やらを浴びるし、蜂とか鳩が群がってきますからね。 久保:本当にパリのカフェの外のテラスは観光地や交通量のものすごい多いところでも普通にありますよね(笑)。 窪:パリといえば日本から荷物や手紙を送ると何週間経っても届かないとか、送り返されてくるとかいった噂を聞きますが。 久保:僕は日本から何も送ってもらっていないのでわかりませんが、他の交換留学生が郵便でヒドい目にあってましたね。中の醤油がこぼれてしまったり、郵便がどこにあるかわからなかったり。 堀:一般的にフランスの郵便事情はひどいもんです。日本のようにマンションの戸口まで持ってきてくれるなんていうのは、夢のまた夢ですね。最初のうちは怒り心頭に発するという感じでしたが、いまや、どうにか手元に届けば御の字と思っています。逆に言えば、日本の宅配制度が世界でもまれに見るきめの細かさを誇っているということでもあります。 窪:日本ではタバコが値上がりして、禁煙・分煙が徹底されて愛煙家は肩身の狭い思いをしています。パリの街中や大学構内での喫煙事情はどうですか。 久保:来る前までは、フランスではタバコの値段が高いので喫煙者があんまりいないもんだと思っていたのですが、実際には結構多くの人が吸っています。大学生でも多くの人が吸っていて驚きます。どこからそんなお金出てくるんだろうかと…。日本も高くなったとはいえフランスはその1.5倍はしますからね。また、建物の中はどの施設も完全禁煙なので、大学の前の出入り口にたむろして吸っているんですが、それが邪魔でしょうがない。道がせまいので完全に防いでいる状態です。扉の前で吸うため、5つのうち2つの扉ぐらいしか開けられないのが普通で、その扉に行くまでもひと苦労という状態で、もうどうなってるんだよって思いました(笑)。そこにさらにストライキのマニフェストのビラとかを配る人たちが出てきたら、完全にアウトです。 堀:まあ、サンシエは敷地も狭く、プレハブみたいな校舎ですから、余計に混雑するんでしょう。ヨーロッパでは、飲食店も含めた建物内が禁煙というのがスタンダードになりつつあり、反面、路上喫煙はまったく問題ないところが多いです。日本のように歩きタバコはしにくいけれども屋内にも吸う場所があるというのとどちらがいいのか一概には言えませんが、慣れてしまうと日本の居酒屋なんかには仰天してしまいそうですね。 窪:生活していて、何か大変なことはありますか? 久保:スーパーの行列は日本人からするとひどいですね。僕がよく利用するスーパーが巨大なせいもあるとは思いますが、10分、20分待ちはざらにあります。みんな一度に大量に買ったり、小切手を切ったり、レジの人がゆっくりだというのが原因です。最初はフランスにいる人はみんなよく我慢してるなと思いましたが、最近はもうそれが普通になってしまいました。そういえば、なぜかお客のレジをしている途中に、従業員が突然割って入ってきて、自分の会計を始めるという、日本人にとってはわけのわからないことにも何度か遭遇しています(笑)。 窪:日本のスーパーはかなりシステマティックに、買い物が出来るようになっていますよね。お釣りも自動で出てきたり、小切手を切るという習慣はないものの、カードでの支払いもスムーズですし。 堀:なにより、日本だと行列ができていても平気の平左で従業員どうしがおしゃべりに興じたり、レジを通った商品をゆったりと自分の買い物かごに詰め終わってからようやく支払いを始める(しかも小切手で)おばさんとかがいませんから。パリでは、いわゆる「苛ち」の方は毎日憤死するしかないでしょうね。 久保:それにしても、パリでは本当に待つことが多いです。授業の履修にしても、住宅補助の申請にしても、社会保険に入るにしてもひたすら待ちます。これはレジャーですし、人が多いところに行った僕が悪いんですが、今まで最高に並んだのはサルコジ大統領が住むエリゼ宮に待ったときです。これは9月にフランス全土で普段公開していない場所も含めて公共の施設が一般公開されるときに行ったのですが、この時は朝の8時ぐらいに並び始め、結局入れたのが午後の3時すぎぐらいでした。確かに大統領が使う場所で人気なので来場者数も多いですし、宮中も広くなくセキュティーチェックも厳しいので仕方がないのですが、自分でもよく待ったなと思います。他にもリュクサンブール公園にあるセナ(元老院)にも行ったのですが、ここはほとんど並ばず30分ぐらいで中に入ることができました。ともあれ、本当にフランスではよく並びます。 窪:治安に関してはいかがでしょうか? 久保:パリは日本よりもやはり多少治安が悪いので少し怖い目にもあったりします。マンションの前で黒人の少年グループに囲まれかけて、おどされたり、突然よくわからないのに映画館で女の子たちにからかわれて、通り過ぎ様に叩かれたりと…まぁーなかなかいろんな体験ができます(笑)。幸いまだスリやひったくりにあっていないだけましかなと思っています。 窪:その後遭遇したときには、全員に仕返ししたとか(笑)? 久保:そんな強さは僕にはないですよ(笑)。3人組でしたしね。細い路地は道をチェックしてから入るようにはなりましたが…。 堀:久保君が3月に行くバルセロナは、もっと目に見えて治安が悪いですよ。一目でスリと分かる人が街中を徘徊していますから。 久保:怖い…一人旅なんですが大丈夫なんでしょうか…(笑)。そういえば、日本の他の大学からパリ第3大学に交換留学に来ている友人もバルセロナでスリにあったと言っていました。 窪:久保くんの危険に満ちた生活が垣間見えました(笑)。最近はiPhoneなどの携帯なんかも、狙われたりすると聞きました。日本のように電車で居眠りする人がいないのも、うなずけます。金品を巻き上げられることなく、無事に帰って来て下さい。(続きは、「3.パリからヨーロッパへ」へどうぞ。)
by eizoubunka
| 2011-02-09 06:02
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